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色材の解剖学③ 油彩画のジェッソ下地

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色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。

油彩画のジェッソ下地

ジェッソ下地の注意点

ジェッソは本来アクリル絵具に用いられる水性地塗材ですが、現在では油彩画の下地としても一般的に使われています。
アクリル絵具を油彩画の下地に使用することに問題はありませんが、注意しなければならない点があります。塗布後、水分が抜け切るまでに相当な時間を要することです。1日、2日おいて乾燥したように見えても、内部にはまだ水分が残っています。そのまま油絵具で描くと、後日の剥落につながります。
ジェッソから完全に水分をなくすためには、塗布後、最低3日は放置しておいてください。
ジェッソを塗るときは一度に厚塗りせず、刷毛などで薄く全体に塗り、乾かしながら2、3回塗り重ねます。数回に分けて塗ることで、均一できれいな下地ができ、乾燥も速くなります。粘度が高すぎると感じたときは、20〜30%まで水で薄めてもかまいません。多少薄めて使った方が、美しく、良い状態の下地ができます。平滑な面にしたい場合は、乾燥後、細目のサンドペーパーで磨きます。
ジェッソの塗膜は少し吸い込みがあるため、油絵具もしっかりと食いつきます。有色の下地にしたいときはジェッソにアクリル絵具を混ぜてつくることもできますが、作品にある程度鮮やかな地色を残したい場合は最初から色のついたカラー ジェッソを使うと便利です。カラー ジェッソの色数は現在21色あり、絵具のように混ぜて調色ができます。

カラージェッソ

カラー ジェッソ
カラー 全21色
容量 300ml、900ml

水性絵具との併用

油絵具はアクリル絵具など水性絵具の上にも描くことが可能です。
しかし、ジェッソと同様、下地にくる水性絵具の水分を完全に飛ばしてしまわないと剥離を招く場合があるので注意しましょう。また、油絵具の食いつきを良くするために、樹脂分の多い平滑な面にしないよう留意することも大切です。短時間で油絵を仕上げたい場合、例えば受験時など、アクリルと油彩の併用がしばしば見られます。それだと、アクリル絵具内の水分蒸発が不完全なうちに油絵具を塗ることになります。
長期保存を目的とした作品制作には、同じ日のうちにアクリルと油彩を重ね塗りするような描き方はおすすめできません。

油絵具と水性絵具との併用
油絵具と水性絵具との併用

下地と絵具の大原則

水性下地の上に油絵具で描くのは大丈夫ですが、その逆は避けましょう。
サンドペーパーで油絵用キャンバスの表面をざらざらにするなどの処理は、本質的な解決にはなりません。ざらざらの面に水性絵具が物理的に「引っ掛かっている」だけなので、後日の絵具層の剥離を招くことになります。油絵用キャンバスなど油性の下地に水性絵具で描くことは、絶対に避けてください。また、ジェッソの上に油絵を描いたとしても、ジェッソを塗ったのが油絵用キャンバスであればジェッソごと油絵具が剥がれてしまいます。『水性の上に油性のものは塗れるが、油性の上に水性のものは塗れない』、この大原則は必ず覚えておいてください。
それから、「アクリル・油絵両用」と記されたキャンバスは全て水性キャンバスです。油絵用キャンバスはリンシードオイルの臭いで判別できます。いくらか黄変(油焼け)しているキャンバスがあれば、それは油絵用キャンバスです。キャンバスを選ぶときの参考にしてください。

下地と絵具の大原則
下地と絵具の大原則


色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。