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色材の解剖学⑤ 油絵の保護ワニスと画面のつや

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色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。

油絵の保護ワニスと画面のつや

保護用ワニスの種類と特色

油彩の作品をそのままにしていると、空気中の有毒ガスやほこり、たばこの煙などによって作品が汚染されます。そのため、画面の上に通気を遮断する無色透明の被膜をつくって作品を守るのが保護用ワニスの役目です。古くなった保護用ワニスの被膜はペトロールなどで拭き取れ、新たに塗り替えられるので、いつまでも作品を美しいままで保管できます。
保護用ワニスにはつや出しと、つや消しタイプの2種類があります。いずれも、塗布するときは作品が完全に乾燥(目安は6から12ヵ月後)してからにします。被膜が通気を遮断するため、絵具が半乾きの状態で塗ると亀裂や剥落の原因になるからです。
以下に代表的な製品とその特長、使用上の注意、テクニックなどを簡単に説明します。

■つや出し…タブロー、スプレー タブロー
被膜が強く、塗り替え時の再溶解性に優れた理想的なワニスです。
湿度の高い日に塗ると、塗布膜が白く曇ることがあるので、天気のよい日に塗るようにします。液状とスプレータイプがあります。

■つや消し…ブランマット リキード、スプレー マットタブロー
単独で使用できますが、「ブランマット リキード」は「タブロー」と適宜混合することで、半光沢の画面がつくれます。
「スプレー マットタブロー」はわずかに通気性があるので、「タブロー」の上から塗布するとより完全な保護膜になり、塗り重ねによって半光沢の効果が出せます。

タブロー塗布画面
マットタブロー塗布画面

完全乾燥を待たずに使えるワニス

画面が完全に乾燥するのを待っていては展覧会に間に合わない。絵を描いていると、そういったケースが多いのではないでしょうか。そんなときに使える便利な保護用ワニスが、「ラピッド タブロー」(つや出しタイプ)です。
通気性があるので、絵具の表面が乾燥(指触乾燥)した頃から使えます。ただ、画面の状況上、仮引き保護ワニス的な性格が強いため、後日、作品内部まで絵具が乾燥したときには、「タブロー」「スプレー タブロー」への塗り替えをおすすめします。

ラピット タブロー

ラピッド タブロー
種類 画用液、スプレー
サイズ  画用液 200ml、500ml
     スプレー 220ml

「つや」の原理

ところで、どうして「つや」が出たり、「つや」のないマットな画面になるかご存知でしょうか。

図1は油絵具のみで描いた画面の状態です。
塗ったばかりの油絵具は全体を滑らかな油が包んでいて「つや」がありますが、乾乾燥途上での酸素やガスのやりとりによって、表面に微細な凹凸ができます。この凹凸が光を乱反射させるため、「つや」がなくなるわけです。
図2はつや出し用のワニスをかけたものです。
ワニスが画面の凹凸をならした状態で固まるので、表面は平らになります。この面が光を反射するため、「つや」が出てきます。
図3はつや消し用のワニスをかけたものです。
ワニスの中に透明な粒子が配合されているため、表面がザラザラになります。これが光を乱反射して、マットな画面をつくります。
「つや」がある、「つや」がない関係は、ガラスとすりガラスをイメージするとわかりやすいでしょう。簡単な科学の原理ですが、知っておくと画面の光沢を調整するワニスの働きが理解しやすいと思います。



色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。