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色材の解剖学⑩ 下地の吸収性について

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色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。

 

下地の吸収性について

下地の種類と特色

画材店に行くと、油絵用、アクリル用など、用途に応じて下地処理された市販キャンバスが簡単に手に入るため、それを買ってきて描くことが普通になってきました。そのせいか、下地はどうやってつくられ、どんな性質を持っているのかなどを、知らない人が意外と多いようです。
下地は吸収性の違いによって、大きく3つに分類されます。それぞれの下地の長所と短所、下地づくりの方法について述べてみます。

■非吸収性下地(油性)
油絵具との相性がよい下地です。しかし、アクリルや水彩絵具は剥離する恐れがあるので使えません。
長所は、絵具の油分を吸い込まないため艶が出ること、描き始めに失敗しても拭いとれること、柔軟性があって巻けること、などです。逆に、吸い込みが少ないため、画面が艶消しにならず、半吸収性や吸収性の下地に比べると暗い画面になるのが欠点です。
膠やPVA(ポリビニルアルコール)で目止めしたキャンバスに、油性展色材で練った白色顔料を地塗りしてつくることができます。顔料は鉛白やチタン白、展色材にはアマニ油やアルキド樹脂などが使えます。

クイックベース

対応する下地材〈クイックベース〉
上で述べたのと同様、リンシードベースの油性下地材です。

■半吸収性下地(半油性)
バランスの取れた下地です。これといった欠点もなく、油彩はもちろんのこと、テンペラと油彩の併用技法にも適しています。
長所は、ほどよい吸収性を持っているため絵具の定着がよいことや、適度な艶と色調の明るさを保つことです。
つくり方は、膠に白色顔料(白亜、チタン白)、リンシード オイルを練り合わせ、それをキャンバスに塗って仕上げます。半吸収性下地をつくるときのポイントは、リンシード オイルの量です。量が多くなれば非吸収性に近くなり、少なければ吸収性下地に近くなります。

ジェッソ

対応する下地材〈ジェッソ〉
上の処方は伝統的なものですが、ジェッソはアクリル樹脂ベースの水性で、油絵具にも水性絵具にも使えます。

■吸収性下地(水性)
中世のテンペラ絵画で使用された下地です。絵具の定着がよく、艶消し画面ができます。
絵具が早く乾き、描きはじめを水性、仕上げを油彩にできるという長所をもっています。硬くてもろいのが欠点で、巻けません。キャンバスのような柔軟な支持体に厚く塗ると、亀裂の危険も伴います。一度塗ってしまうと、拭い取れないのも不便です。テンペラやアクリルなら大丈夫ですが、油彩画に使用すると下地が絵具の油を吸い込んでしまい、艶引けするので注意が必要です。
この下地は、白亜あるいはボローニャ石膏と膠(膠水)を練り合わせてつくります。
支持体にはキャンバスよりも綿布を貼った板などをおすすめします。

アブソルバン

対応する下地材〈アブソルバン〉
伝統処方と違いアクリル樹脂ベースで、手軽に吸収性下地がつくれる製品です。

以上が代表的な下地ですが、現在はアクリルエマルションで地塗りされた半吸収性の下地が多くなってきました。
値段が安く、油絵具、アクリル、テンペラまでオールマイティに使用できるからです。

下地を自作する

画材店には、下地処理や膠引きをしていない生キャンバスがあります。白亜やリンシード オイルなど、下地用の材料も揃っています。具体的な方法は紹介できませんでしたが、専門書を見れば下地づくりの方法が詳しく書かれています。
下地処理された市販のキャンバスに飽き足らなくなったら、自分でつくってみてはいかがでしょうか。自作してみれば、下地の吸収性がいかに技法や仕上がりに影響を与えているかがよくわかります。下地づくりに熟達すれば、自分の技法や仕上がりのイメージにぴったり合った吸収性を持つ、オリジナル・キャンバスをつくることができます。

 



色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。

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