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色材の解剖学⑭ 油絵具のブラック

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色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。

 

油絵具のブラック

ブラックを使う難しさ

「ブラックは使うのが難しい」。そう思っているアーチストは多いようです。なぜなら多用すると絵が濁ってしまうからです。
原因は画面の彩度の低下です。黒は入射光のほとんどを吸収するため、他の絵具にブラックが混ざると、画面の彩度が落ちて、色が鈍く、濁って見えるようになります。そのためブラックを使わず、補色の混色で黒みを与える手法を好むアーチストがいます。画面の彩度を落とすことなく、黒み感が得られるからです。しかし、油絵具のブラックは高濃度で使えば黒そのものですが、ホワイトやその他の絵具で薄めていくと、無彩色から青みのある黒になったり、温かみのあるグレイや赤みのある黒になったりします。ブラックに使われている黒色顔料でも、種類によって特徴が違うからです
以下に代表的なブラックの種類と顔料、特徴を紹介します。

■アイボリ ブラック
アイボリ ブラック


炭化させた動物の骨(骨炭)を顔料とした、赤みのあるブラックです。ホワイトに混ぜると、赤みのあるグレイがつくれます。
昔は象牙(アイボリ)を使っていたため、この名で呼ばれています。
現在では一般的にアイボリ ブラックは牛などの骨を使用していますが、ホルベインの油一とヴェルネ油絵具には本物の象牙(アイボリ)炭が使われています。

■ピーチ ブラック
ピーチ ブラック


昔は桃の種を焼いて顔料にしたことから、こう呼ばれます。現在は縮合アニリン系の顔料でつくられています。
色は暖色と寒色の中間調。漆黒度が高く、見た目がいちばん黒いブラックです。

■ランプ ブラック
ランプ ブラック


油が不完全燃焼したときにできる煤が顔料です。青みのある黒です。つやはありません。ホワイトを混ぜると落ち着いたグレイになります。

■ブルー ブラック
ブルー ブラック


「ブラック」と名はついていても、ウルトラマリンの顔料が含まれた黒に近い青です。
ホワイトで薄めると青みが強く出ます。青みがあることで、黒が引き立って見えます。

画像は4種類のブラックの頭色(濃く塗った場合)、腹色(薄く塗った場合)、ホワイトを混ぜた場合の色の変化を示したものです。同じ黒でありながら、微妙に色が異なっています。しかし、あくまでも塗り見本は目安。メーカーや用いる白色顔料の種類によって色味は変わってくるので、実際にご自身で試されることをお奨めします。それぞれのブラックの特徴を知っておけば、画風やテーマに合わせて、最適なブラックを使い分けることができるのではないでしょうか。

アイボリブラックのカビ対策

4種類のブラックの中で、アイボリブラックを使う場合に注意しなければならないことがあります。カビです。原料の骨は、炭素とともに大量のリン酸カルシウムを含んでいます。リン酸カルシウムを養分に、カビが生育するからです。アイボリブラックには防カビ剤が配合されていますが、完成した作品を湿度の高い環境に長時間置いておくとカビが生えるおそれが出てきます。カビを防ぐためには、湿気の少ないところに保管するとともに、カビ対策を講じておくとよいでしょう。
有効なのは、防カビ成分を含む保護ワニスを完成した作品にかけることです。ホルベインの水彩保護ワニス(防カビ スプレー)を用いることをお奨めします。水彩保護ワニスと銘打っていますが、油彩画面に用いても支障ありません。直接施すと後で除去するのが困難なので、タブローで画面に遮断層を設け、その上に施します。日用品売場で売っている防カビ スプレーもありますが、作品まで壊してしまう成分の含まれている可能性があるので、使わない方が無難です。


 

関連書籍

INAXライブミュージアム企画展「天然黒ぐろ―鉄と炭素のものがたり」関連書籍(LIXIL出版刊)内、油絵具——炭素ページ
こちらの書籍内にてホルベイン技術担当者がブラックの顔料について詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
ISBN 978-4-86480-913-9

色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。

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