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色材の解剖学⑬ 水彩画の保護ワニス

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色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。

水彩画の保護ワニス

紫外線、カビから水彩画を保護する

水彩画の展覧会に行くと、美術館や画廊の室内が暗いのにお気づきでしょうか。水彩画は油彩画に比べて耐光性が劣り、むやみに紫外線をあてると作品が褪色してしまうからです。また、水彩画の基底材である紙は湿度の変化に敏感なため、キャンバス以上にカビが生えやすくなります。カビは一度生えると、紙の繊維の隙間に入り込み、画面そのものを変質させるため、完全に除去するのが難しくなります。顔料の褪色の原因である紫外線、そしてカビから水彩画を護る、水彩画用の保護ワニスがホルベインから発売されています。

2つの耐光ワニス
UVバーニッシュ

油彩画は顔料と合わせた糊材(乾性油)がそのまま酸化して固化するに対して、水彩画は水分が蒸発して固化するので、顔料が比較的むき出しの状態になります。水彩画の耐光性が弱いのは、むき出しの顔料に直接紫外線があたるためです。UVグロス バーニッシュ、UVマット バーニッシュは紫外線を吸収・分解して、顔料の色褪せを防ぎ、色の保ちを高める耐光ワニス。グロスはつやあり、マットはつや消しタイプです。いずれもかけ過ぎると成分の樹脂によって紙が透明化したり、色調が変わったりすることがあるので注意が必要です。

カビを防ぐワニス
水彩保護ワニス

防カビ効果を持たせたのが、ホルベインの水彩画 保護ワニスです。作品が完成し完全に乾燥した後、画面より30cmほど離して全体に薄く均一に吹き付けます。
画面が終わったら、裏面にも同様に吹き付けます。片面だけだと、防カビ効果が十分に得られないので注意してください。

水彩保護ワニスの効果
水彩保護ワニスの効果

耐水効果と塗り替え

2つのUVバーニッシュは、いずれも耐水効果を持っています。従って、使用した後では水彩による加筆ははじいてできません。水彩画 保護ワニスも耐水性がありますが、UVバーニッシュほど強くないので加筆が可能です。油彩画用の保護ワニスは後日表面が汚れたらワニスごと洗い流し、再び塗り替えることができますが、水彩画 保護ワニスは基底材が弱い紙であること、紙の余白部分にしみこんだ樹脂を再溶解させて取り除くのが困難なことから、現実的には塗り替えは難しいようです。ちなみに、水彩画 保護ワニスはアルコールで、UVグロス バーニッシュ、UVマット バーニッシュはペトロールなどで再溶解できます。
タブローやマットタブローなど、油彩画に用いる保護ワニスがあるように、水彩画にも保護ワニスがあってもいい。そういう発想から生まれたのが、ホルベインの水彩画 保護ワニスとUVグロス バーニッシュ、UVマット バーニッシュです。水彩画作品を永く、いい状態で保存して愉しみたいというアーチストに使って頂きたいワニスです。



色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。