絵具、絵画材料のホルベイン

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画材紹介「アクリリック[インク]×杉田陽平」

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美術誌「美術手帖」の特集「注目の画材紹介」にて弊社製品が紹介されました。

美術手帖「注目の画材紹介」

さまざまな観点から開発された個性豊かな画材。
実際に使用してその使い心地を体感してみるのも作品の幅をひろげる一案だ。2人の気鋭アーティストが、頼れる画材との出会いと絵画の可能性について、自らの作品とともに語った。

アクリリック[インク]

粘度が異なる3種類が展開される、ホルベインのアクリリックシリーズ。
なかでもさらりとしたテクスチャーと鮮やかな発色が特長の[インク]の魅力について、画家の杉田陽平に聞いた。

注目アイテム

ITEM アクリリック[インク]
水で薄めず使用できる、ホルベインの液状アクリル樹脂絵具。顔料濃度が高く一度塗りでも鮮やかに発色。耐光性に優れ、乾燥後は耐水性となる。色構成は同シリーズの[ヘビーボディ]や[フルイド]と共通で、混色・併用も可能。4種類の専用マーカー容器(別売)やエアブラシ、つけペンなど幅広いツールに対応する。全49色とメディウム2種の展開で、100ml、850〜1850円。

crystal seriese 12

crystal seriese 12 2018
プレパラート、アクリル絵具 40×40×4cm(*)

pith seriese 35

pith seriese 35 2018
キャンバスにアクリル55×29×11cm

少ない筆数で最大の効果が得られるアクリリック[インク]

「未知なる絵画をつくる」をテーマに、鑑賞者の既成概念を揺り動かす独特のフォルムの絵画作品などを制作し、絵画の存在そのものを問う杉田陽平。キャンバスからはみ出た絵具の塊は、どこまでが塗料でどこまでが支持体なのか。境界は溶け合い、見る者を「絵画の謎」へと誘い込む。
「絵画はいつ立ち上がり、どこに向かうのか。そのミステリーを解く鍵は、絵具や支持体を様々な角度からひたすら観察することだと思います」。絵画の分解、分析から始まる杉田の刺激的な制作に応えてくれるのが、アクリリックシリーズの中でももっとも柔らかい液状の[インク]だ。
「pith seriese」は、ボード上にアクリル絵具を搾り出し、混ぜ、重ね、あるいは引っかき、固めて剥がした「ピース」を組み合わせた作品。赤色の《pith seriese 35》ひとつを例に挙げても、[インク]を併用することにより、透明な赤、光沢を秘めた赤、硬質な赤など、「赤」の中に無限の深さを潜ませることができるという。
 その赤いピースの一部に、筆跡の情報量が多い印象派の巨匠モネの《散歩、日傘をさす女》(1875)を描き込んだ。「これまでの絵具は、薄く塗るとカサカサして痩せてしまうのですが、[インク]は伸びが良いうえに顔料濃度が高いので、繊細な仕事がしやすい。少ない筆数で最大の効果が得られます」。
 平行して制作する「crystal seriese」は変容する絵画。アクリル板の間に挟まれた絵具は空気に触れず、乾燥しないため毎日少しずつ表情が変化する。「[インク]のなめらかな粒度と鮮やかな発色で、隣接する色が美しく、表情豊かに混ざり合うのに驚きました」。
 偶然性を引き込み、破綻寸前で調和を見出す。予測不能の挑戦が次にどんな新しい世界を見せてくれるのか、期待が膨らむ。

制作風景1

[インク]を使って「pith seriese」に使用するピースを制作する様子

制作風景2

同じ色味で粘度が異なるホルベインアクリリックシリーズの、左から[ヘビーボディ][フルイド][インク]。[インク]は薄めなくても水のようにさらりとしている

杉田 陽平さん

杉田 陽平(すぎた・ようへい)
1983年三重県生まれ。2008年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。主な受賞に「FACE展2014」損保ジャパン美術賞展入選など。アート集団「じゃぽにか」にも参加。


美術手帖 18年3月号

掲載元:
美術手帖 18年3月号
文/永峰美佳
撮影/稲葉真(画材、*を除く)