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第1回「山本佳子の不透明水彩〈ガッシュ〉集中講座」

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人物編

全3回にわたり、不透明水彩集中講座を開催します。小中学校で親しんだ不透明水彩絵具。何となく使っていたその絵具には絵を描く上での大事な長所があります。魅力を再確認し、使うほどに絵を描くことが楽しくなるこの絵具についてお伝えしたいと思います。

第1回目の今回は「人物編」。
まずは特徴を生かし、人物画を身近に楽しんで描けるコツをお伝えします。

新鮮な感動をすぐ描ける不透明水彩〈ガッシュ〉

新鮮な感動はモチーフと同じで形を変えていく、生きたものです。そして、感動は1枚でも多く絵にしたいもの。不透明水彩(ガッシュ)は乾きが早く、修正がきくので、制作時間がとても早くなります。修正できることでタッチも生き生きとしたものになり、そういう描き方で枚数を描くと上達も早くなります。不透明水彩は絵を描く人の心に沿ってくれる、やさしい画材です。

透明水彩と不透明水彩との違い

透明水彩も不透明水彩も、水に絵具を溶いて使います。にじみやぼかしももちろんできます。そこまでは同じですが、透明水彩は、明るい部分は水彩紙の明るさを生かして描いていきます。うまくいけば本当に美しい、水彩らしい絵になります。

不透明水彩も、たっぷりの水で水彩紙の明るさを生かし、透明水彩のようにも使えます。それに加え、水に溶く絵具の量を増やして、絵具だけの濃さになるまでの間、その幅で絵を描きます。また、明るい部分も水彩紙の明るさから白をたっぷり使って作り、盛り上げて使うところまでの幅があります。絵具を多く使うと油彩のような力強い絵にもなります。

もっとも大きな違いは修正ができるということ。たとえば暗い背景に白い花を描いていて、途中で2つの花の大きさと高さが同じになって面白くないことに気が付いたとき、透明水彩ではなかなか修正することが難しいですが、不透明水彩ではいとも簡単に位置も大きさも白を使って変えることが可能です。

絵を描いていると途中で直したいと思うことが多いものです。不透明水彩の修正は繕つくろうようなものではなく、描くことから離れません。つまり、修正=描くことなのです。

こういう描き方をしていくと、いつの間にか修正も減り、久しぶりに透明水彩を描いてみたら透明水彩だけを描いている時よりうまくいったということも経験されるでしょう。

『二十歳のモデル』不透明水彩〈ガッシュ〉4号大
制作プロセス

1.準備、片付けに無駄な時間は取らない

1.準備、片付けに無駄な時間は取らない

使いっぱなしのパレットに邪魔にならない色が残っているならば掃除しない。邪魔になる色は濡らしたティッシュでふき取るだけでOKです。途中で絵具を何度も出さなくて済むよう必要な絵具はあらかじめ出しておきます。特に白はたくさん使うので多めに出しておきます。

2.まずどういう絵にしたいかを考える

2.どういう絵にしたいか真剣に考えて

まず、自分が描きたい場所を決めます。教室などでは描きたいという場所を選べないこともありますが、少し後ろになっても描きたい場所を探します。場所が決定したら、どの大きさで画面に入れるか考えます。修正がきくとしても、決められるところは最初から決めます。

3.下描きは、あたり程度でよい

3.下描きは、あたり程度でよい

私は鉛筆での下描きをほとんどしません。不透明に慣れてくると、絵具(色)で修正しながら形も取っていくほうが早いのです。描き始めの鉛筆は間違っていることも多いので早く色をつけたいし、線がほしければ後でも描けますから最初はあたり程度で構わないと思います。

4.細かい明るい部分はつぶしてOK

4.細かい明るい部分はつぶしてOK

衣装は袖に肌色が透けて見え、白い刺繍がぽつぽつあり、魅力がありました。透けた肌色を先に描き、その上に白を使って刺繍部分を描いていきます。不透明水彩では明るい部分を残すのではなく下の色でつぶして大丈夫。とても能率的です。顔も肌の色でまず塗ってしまいます。目鼻口も少し描きました。

5.よく見て、感動を描く

5.よく見て、感動を描く

衣装はポーズごとに形が変わります。モデルさんに断って画像を撮らせてもらっておくと安心です。あるがまま描くとスカートから足が見えました。絵としてどうか…目の前の対象や画像に引っ張られ、何を描きたかったのかわからなくなることがあります。そこに注意していれば記録画像は大いに参考にしてよいと思います。描きたいと思った感動を描くことができているかが大事です。

6.追求し、あきらめない

6.追求し、あきらめない

絵に必要な修正は、即実行してみます。不透明水彩は絵を追求できる画材です。スカート丈は下まで抜いて背景も描きました。6号くらいまでの画面では、目鼻口や手の先の細かい部分は筆で描くのは大変です。柔軟に色鉛筆などに頼るのも効果的です。大事なのは自分の絵を追求すること。画材などの取捨選択は自由です。

人物を描くポイント

  1. 大きくとらえて、ざっくりと色をつける。
  2. 全身を入れるか、上半身か。どこまで入れるかによってまず頭の大きさ、位置を決める。
  3. 左右対になるものは必ず比べる。右と左の目の高さはどちらが上?どちらがはっきり見えるか? 肩の高さ、ひざの高さ、手は?というように2つあるものは必ず、大きさ、高さ、強さ、色味などを比べます。

部分にとらわれて物の説明にならないように注意します。絵は対象との間にできるものです。離れてみると全体のバランスが見えますので自分にとって好きな絵になっているかどうかを時々確認します。

画材について

絵具は、ホルベインの不透明水彩絵具(ガッシュ)を使っています。白はたくさん使うので、ジンクホワイトの大きな9号チューブを愛用しています。この度、ホルベインさんへのご相談をきっかけに、私の選んだ不透明水彩絵具18色の特製セットができることになりました。水彩紙は、ホルベイン ストラスモア インペリアルのスケッチブックを使用しました。パレットは、絵具を混ぜるところが大きいもので、基本的には机の上に置いて使います。

山本佳子が選んだ18色のセットができました!
絵を描く人のための不透明水彩絵具〈ガッシュ〉

山本佳子が選んだ18色のセット

私の選んだ18色で、ホルベインさんが不透明水彩絵具セットを作ってくれました!

このセットは、絵を描く人のための特別色組です。混色で作れる色は省き、花や風景などに必要な色を加え、高価な美しい色の絵具も組み込んでもらいました。いわば、アーチストガッシュスペシャルです。人物、静物、風景と自然界にある色は、このセットでおそらく十分に表現することができます。

ちょっぴり高価ですが、絵を描くことを1番に考えれば、間違いなく納得がいくものだと思います。美しい絵具の色はそのまま絵に響きます。ぜひ手に取って実感してください。

【色組内容】(15ml 18色)

  • ジンク ホワイト
  • アイボリ ブラック
  • チャイニーズ オレンジ
  • バーント シェンナ
  • セルリアン ブルー
  • コバルト ブルー
  • プルシャン ブルー
  • ウルトラマリン ブルー ディープ
  • テールベルト
  • フタロ グリーン
  • イエロー オーカー
  • カドミウム イエロー レモン
  • カドミウム イエロー
  • カドミウム レッド
  • カドミウム レッド パープル
  • オペラ
  • コバルト バイオレット
  • アッシュ グリーン

機会があるたびに一枚の絵を

絵はたくさん描くほどに上達します。1枚の絵に時間をたっぷりかけて追及することも必要ですが、小さな絵の場合、特に不透明水彩は乾くのが早く、すべての工程をモチーフの新鮮さや感動が変わらないうちに描くことができます。機会があるたびに1枚の絵を描くことは上達への近道です。感動を大事にして、その感動がちょっとでも表現できたなら仕上がっていなくてもそのまま触らないで大事にとっておくのもよいと思います。ぜひ、この絵具の長所を生かして、気持ちのままにたくさん絵を描いてください。

<参考作品>

ある日のモデル 山本佳子 不透明水彩(ガッシュ)3号大

ある日のモデル

小さな画面に全身を入れる場合には目鼻口を省略したほうがよい場合があります。早く描ける不透明水彩の特徴を生かし、ざっくりと…全体がまとまったので筆をおきました。このような積み重ねは制作にうんと響いているように感じます。

<参考作品>

ワンピースの若い人 山本佳子 不透明水彩(ガッシュ)4号大

ワンピースの若い人

今回の講座作品「二十歳のモデル」さんと従妹の彼女は、普段は教室で一緒に絵を描いています。シンプルなワンピースがとても似合っていました。小さい画面でもこのくらいの大きさで入れると、顔も絵に合ったタッチで描くことができます。

「一枚の繪」2018年7月号特別綴じ込み付録

綴じ込み付録には、完成作品ポスターと山本佳子による解説が掲載されています。

「一枚の繪」2018年7月号特別綴じ込み付録

山本佳子さん

山本 佳子(やまもと・よしこ)
岡山生まれ 岡山大学大学院修了
日展入選 一水会新人賞、一般佳作賞 山下新太郎奨励賞、会員佳作賞
日展会友 一水会会員

4月16日より「山本佳子作品展(19’  in Nagoya)ー絵描きの日常ー」開催
会 場:セントラル画材(愛知県名古屋市)
会 期:2019 年4 月16 日(火)— 4 月20 日(土)

詳細はブログをご覧ください


一枚の絵 18年7月号

掲載元:
一枚の繪 18年7月号
文/山本佳子
一枚の繪オンラインショップはこちら

※この度、こちらへ載せていただけることになり、連載された「一枚の繪」の文章を少し直させていただいています。また、連載の後にブログなどでお知らせをしていますが、18色セットの箱には実は3色の絵具の入るとっておきのスペースがあります。私はそこにローアンバーやカドミウムグリーンペールなどをプラスしています。セピアもあっていいかもしれません。3色はご自身のオリジナルの絵具を選んでご自分に合った21色セットを作るのも楽しいと思います。