やました あつこ YAMASHITA Atsuko
dreaming
水彩絵具、岩絵具、鉛筆、色鉛筆、ペン、パネル、和紙
162.0×130.3cm
2023年
ステイトメント
たまに人間はニンゲンの理解の範疇を越えたりする。
例えば恋というものは時に気が狂うほど、
そこから生まれるパワーは凄まじいものがあると思う。
そしてその相手が異性であり、同性であり、
老人であり、小児であり、
動物であり、植物であり、
液体でもあるのだ。
誤解の多いパラフィリアだが、
彼らはお互いを尊重しあい、愛情を持って対等にリレーションシップを取っている。
もちろん相手を傷つけることなどしない。
その行為はヘテロセクシャルと全く変わらない。
交流電流を生み出した天才発明家ニコラ・テスラは、晩年雌鳩をパートナーとして暮らしていた。
老夫婦がパートナーを失うと相手も追うように亡くなると言われるように、
パートナーの鳩が亡くなってからテスラも事切れたのだ。
テスラと鳩の間には夫婦としてのしっかりとした愛情のリレーションシップを取られていたと私は思う。
人間の脳は10%しか使われていない。
お互いに言語を超えたコミュニケーションが取れること。
これは超能力と言うべきか。
私は人間の可能性だと思う。
一目惚れは覚醒剤と同等の作用があるらしい。
あなたの恋人と同じように、
植物性愛は植物と対等に目線を合わせられるのだ。
動物性愛者は必ずしも動物虐待をしているとは限らない。
家庭内暴力を起こす異性愛者は見えないだけで山ほどいるだろう。
ヘテロセクシャルではないこと、それは不幸だと人は言うかもしれない。
私はそう思わない。
これは原罪ではない。
いくら非難をしても、偏見を持ったとしても、
障害だと決めつけたところで
ニンゲンは変えられない。
正しさは別の正しさを排除するだけである。
私は「邪魔のない幸せ」を絵画にしていている。
dreaming
水彩絵具、岩絵具、鉛筆、色鉛筆、ペン、パネル、和紙
116.7×91.0cm
2023年
奨学期間中の取り組みについて
私は油画科で元々油彩を描いていましたが、紙でのドローイングをきっかけに2年前から和紙に制作するようにもなりました。保育園の頃は水彩やクレヨンを使って描いていたことを思うと、和紙での制作は意外と手に馴染んでいて、乾く時間を待つ必要がない分、油彩よりも瞬発力がありました。
和紙に対して使っている物は岩絵具、水彩絵具、色鉛筆、鉛筆、ペン、クーピーまで様々で、油彩の際は油絵具のみに対して非常に幅広いです。様々な画材を重ねて描く作品は表現の仕方も増えていき、油彩では難しい細かな作業も可能になりました。
新しい事をしていく中で壁画制作を取り組み始めたり、今の制作はとても発見と刺激があります。画材屋に足を運ぶ度に新しいものを少しずつ買い足して使ってみる。これは使えそう、これは難しい。とちょっとずつ研究をしていました。それも締切が近づきアトリエに缶詰状態になればなかなか難しい。
そんな中でホルベインスカラシップに通り、パンフレットの商品説明を読みながら画材を選ぶというのはとてもありがたく、この機会がなければ手に取ることはなかった画材に出会えました。
筆一本変わるだけで制作がスムーズになったり、この画材にチャレンジしてみよう!という感覚はとても新鮮で久しぶりです。なんだか予備校時代を思い出します。メディウムを使えば顔料から絵具を作ることもできます。大学生の授業で和紙作りをしたこともあり、和紙はコウゾ、ミマタ、ガンピの繊維が重なってできたものなのでコピー用紙のような弱さや破れやすさはなく非常に頑丈な支持体だったり、端切れ同士を薄く溶かした大和ノリでくっ付ければ一枚の和紙にもなります。まさに変幻自在です。
パネルも自作しているので変形の支持体で絵を描いてみたらまた違う見え方ができるのではないか?描いた絵の上から透けて見えるくらいの薄い和紙を貼ったらどうなるのか?黒だけで描いてみたらどのくらい変わるんだろう?まだまだ使える画材も多いはず。
そして和紙で学んだことを油彩でも活かしていけたらと思っています。
dreaming
水彩絵具、岩絵具、鉛筆、色鉛筆、ペン、パネル、和紙
116.7×91.0cm
2023年
奨学期間中に最も使用したホルベイン製品について
◆水彩用メディウム/アラビアゴム メディウム
顔料と混ぜると水彩絵具になるので、透明水彩や日本画材を使う時にはとても重宝しました。メディウムと顔料の割合、ムラが出る混ぜ方、厚塗りをしてしまうと乾いた後にひび割れが起きやすくなります。和紙に染み込む程度の塗りであれば問題なく使えました。
◆油彩筆/HARD RESABLE、RESABLE
今まで油彩には豚毛を主に使っていたので、リセーブルのような柔らかい筆は初めてです。使いづらい印象を持っていたのですが、実際に使うと和紙に対してとても使い心地がよく、届いてからずっと使っています。
油絵具は重いのでリセーブルは毛が柔らかく掬い取れないところがありますが、水彩絵具は掬い取りやすく筆圧を調整してくれます。
◆画面保護紙/クッツカーネ
絵画の表面を守り、絵具が付着しない包装紙。作品を運ぶ際、表面が乾いていない時に毎回重宝して使ってます。包装して運べば自分(他人)の衣服にも着色する心配はないので交通機関を使う時はとても便利です。汚れがある時は拭き取れば再び使うこともできると思います。作品を購入してくださったお客様に配送する際も表面にクッツカーネを挟むこともあります。
◆下地処理剤/ヤニ止めシーラー
油彩の場合は生キャンバスに地塗りする前の目止め。パネルは和紙を貼る前のヤニ止めとして使うので、油彩水彩問わず使う物です。私は水で薄めて使うのでシーラーとのバランスは難しいですが、二層塗りにしたり工夫をすれば使いやすくなると思います。
◆透明水彩絵具/オペラ(キナクリドンオペラ)
透明感のある濃い蛍光ピンク(少しマゼンタ寄り)。制作に使った朱色を作るためにオペラを毎回使用しました。黄色を混ぜていくと朱色になり、一般的な朱色より彩度が高く透明感が出ます。(蛍光ではない色で作ると沈んだ朱色になりました。)
混色はしていく度に彩度が下がり、色が多ければ多いほど黒に近づいていきますが、彩度が落ちず明るさを保つには一つ蛍光系の絵具に替えることが方法として使えると思いました。
◆顔料/チタニウムホワイト
学生時、藤田嗣治の地塗りを参考にして自分が描きやすいと思う地塗り材を研究してきた結果、生キャンバスに地塗りをする際にチタニウムホワイトの粉を使用。下地材を練っている時に色が沈んできたらチタニウムを追加すると明るい白色になっていきます。
プロフィール
やました あつこ YAMASHITA Atsuko
個展
グループ展
その他
パブリックコレクション
受賞歴他