色材の解剖学⑰ 絵画と金箔【洋画編】
色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。
絵画と金箔【洋画編】
色材としての金箔
日本では古くから仏像や建築に金箔が使われ、屏風や襖絵、工芸品など、幅広く利用されてきました。西洋でも建築や祭壇の装飾、額縁、中世のイコン(聖像画)、15世紀ごろまでの宗教画の背景に多く使われています。洋の東西を問わず、古より、金箔は美術に欠かせない色材でした。今回は油彩画やテンペラ画への金箔を貼り付ける技法を紹介します。
金箔 23K
サイズ:109×109㎜
枚数:10枚入
油彩画への金箔接着
ホルベインの「スペシャル ペンチング オイル(リンシード ベース)」を使ったキャンバスの油彩画面への金箔接着方法を紹介します。
よく乾いた画面の上に、スペシャル ペンチング オイル(リンシード ベース)を塗ります。原液で使用できますが、粘りがほしい場合は小皿に受け、少し溶剤を揮発させてから用います。透明な液なので塗布あとが判りにくい場合は、油絵具を混ぜて色を付けます。あらかじめシッカチフクルトレを少量混ぜますと乾燥が早くなります。
塗布後数分から数十分で、指で触れて表面が粘着テープのような状態になったときに箔刷毛を使い金箔をのせます。箔刷毛は頭髪に軽く当て、刷毛に油気を付け金箔を吸い付け運びます。金箔を置いた上から箔刷毛や脱脂綿などで軽く押さえて定着させ、余分な箔は筆などで払います。
1日以上乾燥させておくと、メノウ棒で磨くことができます。
あまり濡れていても、乾いてしまっていても、金箔はうまく貼れないので、あらかじめテストしておきましょう。
作業の際には水分や脂分で箔が付着しやすいので、手や道具類にはベビーパウダーなどをまぶしておくと良いでしょう。
スペシャル ペンチング オイル(リンシード ベース)
金地テンペラ画への箔貼り
西洋画でもっとも古く、高貴とされる方法が「光沢金箔処方」です。テンペラ画に用いられたもので、技術と手間をかければ最高の光沢が得られる箔貼り法です。
手順は次の通りです。基底材には、一般的にシナベニヤ板を使います。
1. 下地作り(光沢金箔処方)
膠液(膠1:水10)にボローニャ石膏を加え下地材を作り、ベニヤ板に刷毛で薄く10回程度塗り重ねます。塗り重ねは半乾きの状態で行います。
乾燥後、鋼鉄製パネルなどで表面が平滑になるまで削ります。鉄板は削る際に石膏面を傷つけないよう両端の角を金やすりで丸く削っておきましょう。
ボローニャ石膏
削り鋼パネル 小
2.箔の貼り方(光沢金箔処方)
金箔を貼る面に箔下とのこ(ボーロ)を薄い膠液(下地制作に使用した膠液を倍に薄めたもの)ボーロ1:膠液4~5の割合で混ぜ、3~4回塗り重ねます。
箔下とのこが乾いたら箔を貼る部分に柔らかい筆で水置きし、箔刷毛を使って箔を一気に置きます。
金箔を置いた上から箔刷毛や脱脂綿などで軽く押さえて定着させ、余分な箔は筆などで払います。
季節により異なりますが2時間ほど乾かした後、メノウ棒で表面を磨き光沢を出します。
色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。