色材の解剖学⑱ 絵画と金箔【日本画編】
色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。
絵画と金箔【日本画編】
日本画金箔の種類と特徴
西洋では、金箔は主に荘厳さや崇高さを表す宗教画のシンボルとして用いられますが、日本画では襖や屏風の障壁画に多く使われ、画面の時間と空間を仕切る役割を果たしています。
金箔 23K
サイズ:109×109㎜
枚数:10枚入
日本画の金箔の貼り方
日本画で画面に金箔を貼ることを箔押しといいます。金箔を並べて貼る「平押し」や、粉状のものを蒔く「砂子」などさまざまな表現方法があります。ここでは一般的な「平押し」について紹介します。用意するものは、木綿布、バレン、箔箸(竹製の巨大なピンセット状の道具)、薄紙、油類(ポマードや椿油など)、ベビーパウダー、雑誌類などです。
1.箔をあかす
とても薄い金箔を扱いやすくするために「箔あかし」を行います。金箔を扱うときは、指先や箔箸にベビーパウダーを付け、油気を取りつつ作業しましょう。
木綿布や雑誌などの紙の上に極少量の油をたらし、バレンで広げます。
バレンに薄く付いた油を金箔の間にある箔合紙に付けます。箔合紙を先ほどとは別の紙の上に置き、軽くこするように油を付けましょう。
箔合紙の油の付いた面を箔の上にそっと置き、箔箸で薄紙の上を撫で空気を追い出すと、箔がピタリと付いてきます。
2.箔押し
箔押しする場所に、にかわ液を薄く塗ります。
にかわ液が乾かないうちに、角を箔箸、対角線の反対側を指でつまみ上げ、箔押しする場所に置きます。
箔合紙の上から箔箸で撫でると、箔が画面に付きます。箔箸で箔合紙を剥いで箔押しの完了です。
金はどの物質とも反応せず、永遠の輝きが得られることから、古代より富と権力の象徴でした。しかし、不純物が多いとその限りではありません。
特に銀を含むと、大気中の硫黄と反応し、硫化物を作って黒くなります。純度の低い箔を使う場合は注意が要ります。また、箔打ちは金を箔打ち紙に挟んで延ばします。最近は洋紙が使われますが、昔は雁皮紙(和紙)が用いられていました。金を延ばし、その後に銀を延ばした使用済みの和紙は、芸妓さんたちが愛用した高級な油取り紙でした。叩かれ叩かれた和紙の表面は滑らかな感触となり、化粧を崩さず、脂をよく吸収するからです。ここ数年、若い女性の間で人気の油取り紙のルーツはここにあります。
色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。