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第2回「山本佳子の不透明水彩〈ガッシュ〉集中講座」

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花編

不透明水彩〈ガッシュ〉集中講座の第2回目、今回は花編です。庭で育てた花、花屋さんに並ぶ季節の花、風景を彩る花…不透明水彩ならではの長所と特徴を生かして、花の美しさや感動を描くコツを、ポイントを絞ってお伝えします。

不透明水彩は高品質で美しい色が揃った絵具です。しかも扱いが簡単です。透明水彩より早く乾き、乾いてもよく水に溶けるので、アクリルのように乾燥してしまうことを気にする必要がありません。油彩のように上に重ねて描くこともでき、手入れも持ち運びも簡単。また水彩紙の水張りなど不要で、「描きたい!」と思ったらすぐに描き始められます。

途中で変えたくなったらすぐ、上から直していくことができ、制作中につぶれてしまったところを洗う必要もありません。白という強い味方があるからです。明るい部分は絵具で描いていけばいくらでも明るくなります。絵を描いていると迷ったり、ぶれたりすることがよくありますが、そんな時もあきらめず追求でき、思うものに徐々に近付けていくことができる画材なのです。

1.途中で形や色、構図さえも変えられる

描いている途中でも形や大きさ、位置など大きな修正も可能です。不透明水彩は、諦めることなく最後まで気持ちのままに絵を動かすことができます。

修正前

修正前

修正中

修正中

修正後

修正後

花が並んでしまったことに気がついて描き直したい→描き進めながら簡単に修正ができる。

2.混色にハイライトに「白」が大活躍

不透明水彩では白をたくさん使います。特にジンクホワイトは、混色しても他の色を濁らすことなく、非常に美しい色が作れます。ジンクホワイトは油彩では使い方に注意が必要とされていますが、不透明水彩ではその欠点はありません。たっぷり使うと控えめなつやが残るのも魅力です。白い花の色やガラスのハイライト部分はほとんどそのままの白を使っています。

バラとライラック

バラとライラック 不透明水彩(ガッシュ)4号大

3.水張り不要。思いつくままに様々な試みを

「トルコキキョウとバラ」は、昨年の銀座ギャラリー一枚の繪での個展中、思いついて画廊で描かせていただいた絵。水張り不要で乾きが早いので、描きたいと思った時に、すぐに短時間で描くことができます。「蘭と苺」のように、立派な花をかわいらしい小さな画面に描くのも好きです。この蘭は白を抜くように背景の色で描き、背景が被ってしまった部分を白で作った花の色で修正加筆しています。

私にとって不透明水彩は、一番身近な絵具です。花が咲いたら描き、大作に行き詰まったらこの絵具で小さな絵に気持ちを移します。不透明水彩は手軽なので思いついた発想をメモする時にも使えます。小さい画面で描いてみることで研究もしやすく、大きな絵を描く時のヒントになっています。

トルコキキョウとバラ

トルコキキョウとバラ 不透明水彩(ガッシュ)4号大

蘭と苺

蘭と苺 不透明水彩(ガッシュ)SM大

4.黒もひとつの色として使ってみる

4.黒もひとつの色として使ってみる

黒は使わないほうがいいとよく聞きますが、黒はその使い方でとても魅力のある美しい色になります。アイボリブラックとジンクホワイトの混色をベースに様々なグレーが作れます。例えば、ウルトラマリンを加えると青味の美しいグレーになります。もちろんグレーは緑と赤を混ぜてもできます。作りたい色を作るためならば何色を使ってもよいと思います。

5.油彩のようにも透明水彩のようにも表現できる

5.油彩のようにも透明水彩のようにも表現できる

私の絵具セットの箱のラベルに使われた作品です。ガッシュは水を多く使えば透明水彩のような表現もできます。この絵では、花瓶の部分は透明水彩のようににじみを利用して描き始め、最後まで残しました。一方、花瓶の透明な表現に対し、バラや背景には絵具をしっかり使って油彩のような表現になりました。透明水彩調の表現と不透明な表現が一枚の絵に混在していることも、ちょっと面白い変化になったように思います。

庭のバラ

庭のバラ 不透明水彩(ガッシュ)6号大

山本佳子が選ぶ不透明水彩の画材

絵具

ホルベイン「山本佳子が選ぶ 絵を描く人のための不透明水彩絵具〈ガッシュ〉18 色セット」

山本佳子が選んだ18色のセット

私の選んだ色組でホルベインさんが絵具セットを作ってくださいました。絵を描くために好ましい色、発色がよく、混色することを考えて選んだ18色です。自然界の色はほぼ、このセットで作ることができます。ホルベインのガッシュ担当の技術の方によると、有色顔料をたくさん使うことで純度を下げることなくできた、とてもピュアな絵具のセットだそうです。純度が高い=彩度が高いということで、とても魅力的です。鈍い色は混色によって作れますが、彩度が高い色は絵具そのものの彩度にかかっているからです。

【色組内容】(15ml 18色)

  • ジンク ホワイト
  • アイボリ ブラック
  • チャイニーズ オレンジ
  • バーント シェンナ
  • セルリアン ブルー
  • コバルト ブルー
  • プルシャン ブルー
  • ウルトラマリン ブルー ディープ
  • テールベルト
  • フタロ グリーン
  • イエロー オーカー
  • カドミウム イエロー レモン
  • カドミウム イエロー
  • カドミウム レッド
  • カドミウム レッド パープル
  • オペラ
  • コバルト バイオレット
  • アッシュ グリーン

水彩紙

ホルベイン ストラスモアインペリアル(スプリングタイプ)

ホルベイン ストラスモアインペリアル(スプリングタイプ)

この水彩紙は筆がよく滑ります。厚みがあって強く、水をたっぷり含んでも波打ちません。

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「一枚の繪」2018年8月号特別綴じ込み付録

綴じ込み付録には、完成作品ポスターと山本佳子による解説が掲載されています。

「一枚の繪」2018年8月号特別綴じ込み付録

山本佳子さん

山本 佳子(やまもと・よしこ)
岡山生まれ 岡山大学大学院修了
日展入選 一水会新人賞、一般佳作賞 山下新太郎奨励賞、会員佳作賞
日展会友 一水会会員

4月16日より「山本佳子作品展(19’  in Nagoya)ー絵描きの日常ー」開催
会 場:セントラル画材(愛知県名古屋市)
会 期:2019 年4 月16 日(火)— 4 月20 日(土)

詳細はブログをご覧ください


一枚の絵 18年8月号

掲載元:
一枚の繪 18年8月号
文/山本佳子
一枚の繪オンラインショップはこちら

※この度、こちらへ載せていただけることになり、連載された「一枚の繪」の文章を少し直させていただいています。また、連載の後にブログなどでお知らせをしていますが、18色セットの箱には実は3色の絵具の入るとっておきのスペースがあります。私はそこにローアンバーやカドミウムグリーンペールなどをプラスしています。セピアもあっていいかもしれません。3色はご自身のオリジナルの絵具を選んでご自分に合った21色セットを作るのも楽しいと思います。