水彩色鉛筆用パレット 開発インタビュー「山本 陽菜」
3月26日(木)に発売予定の「ホルベイン水彩色鉛筆用 パレット」。
本製品は女子美術大学・ドローイングセンターのご紹介でヴィジュアルデザイン専攻4年生の山本陽菜さんに本体とパッケージをデザインいただきました。
今回は山本さんに女子美術大学相模大野キャンパスにてお話を伺いました。
まるで水彩絵具のように―
水彩色鉛筆の可能性を広げる
手にフィットするパレット
―最初に依頼を聞いたときどうおもいましたか?
私がいま在籍しているヴィジュアルデザイン専攻は、平面的なデザインをすることが多く、プロダクトデザインは授業でも一度もやったことがなかったので驚きました。
―水彩色鉛筆用パレットをデザインするにあたって、どんな人に使ってほしいと考えましたか?
私は普段から水彩絵具を使ってイラスト描くことが多く、制作では手に収まるくらいの小さなパレットを使っているのですが、指を通すところがすごく小さくて長時間持っていると指が痛くなっちゃうのを思い出しました。私のようにパレットを手に持って混色したり、画面に近づけて描いたりする人もいるのかなとおもったので、手にフィットするようなデザインにしました。
―パレットを机などに置いて使うこともあるのでしょうか?
普段は手に持って描いてます。

―ご自身の経験がアイデアの源泉なんですね。
デザインの初期案を出すまでに苦労した点や、完成形に至るまでに重視したことを教えてください。
最初はいろんなアプローチのアイデアをたくさん出して、そこから、みなさん(ホルベインの担当者)のリアクションを見て方向性を決めていきました。
最初に提案した案の中で一番方向性が合っていたのが完成品の初期案でした。
方向性が決まった後はミーティングをして、イメージをすり合わせてブラッシュアップしていきました。
―デザインに込めた意図はありますか?
いつも通りグラフィックを作るようなイメージでスケッチを始めて、そこに機能的に良い部分があることで、フォルムとして、造形として、美しいものが作れたらいいなとおもいながら普段の制作と大きく変わらないよう意識しました。
―そうだったんですね。完成したものをご覧になって、一番気に入っている部分はどこでしょうか?
この指をあてる溝の位置と深さが気に入っています。
この溝は初期案から結構微調整していて、最初は溝が深めだったのですが、打ち合わせを重ねる中で、もうちょっと中央の面積を広くした方が良いという話になり、調整しました。 浅くすると持ちづらいのかなとおもったのですが、何回も自分で調整して、どう持っても手にフィットする形に調整できたかなとおもっています。
―たしかに、溝の位置や深さが絶妙ですね。
いろんな角度から持てていいなと思うのと、あと私は手が小さい方なのですが、手が大きな方もいるし、いろんな形の手の方がいるので、どういう持ち方でも対応できるようにできたらいいなと試行錯誤しました。

―普段は、どんな画材を使いますか?
普段は水彩絵具です。
絵を描くときは水彩が一番多くて、水彩色鉛筆も持ってはいるのですけど、使いこなすのが難しくて、、あんまり使っていませんでした。結局、チューブの水彩絵具をパレットに出して使ってます。
色鉛筆は線画を描くとか、役割分担をして使って描いています。
―じゃあ今まで水彩色鉛筆が水に溶けるのは知らなかった?
商品や特性としては知ってはいたのですが、できれば溶けない方がいいなとおもってました。(笑)
―なるほど、では今回の制作でちょっと見方が変わりましたか?
そうですね。水彩色鉛筆自体思ったよりも扱いやすいし「パレットを使うだけでこんなに扱いやすくなるんだ」 っておもいました。
最初の打ち合わせで試作品のパレットを使わせていただいて、その時に 「こんな溶けるんだ!」ってびっくりしました。

―大学生活でいろんな経験をされたと思うのですが、今回の依頼と授業の制作との違いはどんなところでしょうか?
普段の制作だと自分一人で企画立案からアウトプットまでやるので、そこに企業の方が関わるという時点で普段の制作と全然違いました。
しかも開発にたずさわったものが、発売して実際に店頭に並んで、それが消費者の方々に届くっていうのはなかなかない経験です。
―商品として売ることを意識したポイントはありますか?
ホルベインさんのトーンを崩さないことを一番意識しました。店頭に並んだ時に、この製品だけがホルベインじゃないみたいになっちゃうとそれは違うのかなって。
ホルベインさんのいろんなパッケージをネットで調べて、こういうトーンなのかっていうのを掴んだ後に、このパレットを使うことでどんなことが起こるのかという特性をちゃんと見せられたらいいなとおもって作りました。
―確かに、山本さんに作っていただいたパッケージは特徴的でありながらも、既存の製品と並べても違和感なく、自然に受け止められました。
山本さんご自身の今後といいますが、将来の展望のようなものはありますか。
携わらせていただいて、自分も直接企業の方とやりとりできるようなデザインの案件を今後やっていけたらいいなって明確におもうようになりました。
実は、最初は広告だけやりたいなって思ってたんですけど、もうちょっと、プロダクトもそうですけど、パッケージとか幅広くいろんなことができるデザイナーになりたいです。

―今年女子美術大学をご卒業されるということで、同じ美大生の方や若手クリエイターの方へメッセージはありますか。また山本さんは在学中にさまざまな活動をされていましたが、在学中に大事にされていたことはありますか
私がいろんなことをしていたのは単純にデザインが大好きだからです。
これから美大に行きたいなと思っている人は、まずは「自分は何が好きなのか」を明確に持っていることが大切だと思います。
女子美だと周りの子たちがみんな自分の好きにすごくまっすぐで、それに刺激されて私もデザインを頑張ろうとおもいました。
自分の好きをなくさないように生活するのが大事かなって。
―いい言葉ですね、僕もファインアート系の作家さんとお話しする機会がよくあるのですが、若い作家さんの作品について、既に活躍されている作家さんがアドバイスとして よくおっしゃるのは 「まだ自分の描きたいものがわかってないね」 というフレーズです。
先ほど 山本さんがおっしゃった 「自分の好きをなくさないように生活する」 って、すごく普遍的なテーマというか、難しいことだとおもいます。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
山本さんの今後の制作やご活躍を、心から応援しています。


プロフィール
山本 陽菜
YAMAMOTO Haruna
2003年栃木県生まれ。
2022年より女子美術大学ヴィジュアルデザイン専攻に在籍。
素材や手法と向き合いながら、視覚表現の可能性を探っている。


