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ホルベイン・スカラシップ成果展 2023 南條 史生氏講評

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ホルベイン・スカラシップ成果展 2023 南條 史生氏講評

スカラシップ成果展を開催しているN&A Art SITEの南條 史生氏(キュレーター、美術評論家)より、奨学生の作品に対して講評をいただきました。

総評

全体に興味深く拝見しました。それは今日の若い作家の感性がそこはかとなく表れていると感じられたからです。その感性は、素材や技法の選択だけでなく、主題の選択、色彩の雰囲気、素材の自由な選択、描画のスタイルなどから感じられる総合的な物のようです。

個人講評

野原 万里絵

絵画を制作するということの意味を掘り下げ、一方で共同制作から多くの物をくみ取り、過去作のタイトルの通り狂気と秩序に関わる極めて緻密な自分なりのコメントを出したように見える。イメージは文字でもあり、文字はイメージであり、どちらも視覚的な言語なのだということを改めて感じた。

山﨑 愛彦

テクノロジーの発展を視野に入れつつ、現実とは何かを問いかける姿勢の中には極めて科学的、宇宙的視野がある。作品も入れ子状の空間構成を内包した複雑さが魅力的だ。一番右にある、書類のような形式の作品が、コンセプチュアルで謎めいている。これについては本人の話が聞いてみたい。この方式はさらに発展させる余地があるのではないだろうか。

濱口 綾乃

作品はドローイングが持つある種の即興性と、水彩のような薄描きの軽やかさを備えている。植物の持つネットワークのような発展性を制作のイメージとして、広がりのあるリゾームのような世界を構築したところがユニークである。

熊倉 涼子

我々を取り巻く現実の世界に対する極めて科学的な興味と、宇宙的で俯瞰的な世界についてのヴィジョンによって、自由な素材の選択と豊かな色彩で現代の神話を描き出している。

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深田 桃子

最近アートは記号化しているのではないかと思っていたが、深田さんの作品はその議論を思い出させる。これは現代の最も新しい表現言語のトレンドである、そしてどのように物事を見るかという見方である。男性下着の話から今回展示された作品まで、話を敷衍できるのは想像力の柔軟性であり、それをこのように明快に作品化できるのはユニークである。

青山 夢

山形のムカサリ絵馬の取材を通し、生と死のカラフルでエクレクティックな物語性をコンテンツとして、現代における豊かな物語絵画を生み出している。物語は、現代のアートの最も重要な要素である。それを紬ぎ出すのは、アーティストの重要な役目であるだろう。

濱元 祐佳

ぬいぐるみの意味を掘り下げて、そこから作品の可能性を引き出している。シュールレアリスティックで、かわいいと不気味の中間に所在する、ある種の内面的な世界を描いている。他の人とは異なった現実の姿がぬいぐるみを軸に描かれているところが興味深い。

南條 史生(キュレーター、美術評論家)

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1949年東京生まれ。1972年慶應義塾大学経済学部、1977年文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。1978-86年国際交流基金、1986-90年ICAナゴヤディレクター、1990年-2002年及び2014年-エヌ・アンド・エー(株)代表取締役、2002-06年森美術館副館長、2006年11月-2019年同館館長、2020年-同館特別顧問。

https://nanjo.com/