絵具、絵画材料のホルベイン

ニュースリリース > アートをはじめよう > 色材の解剖学⑨ 水に溶ける油絵具

色材の解剖学⑨ 水に溶ける油絵具

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。

水に溶ける油絵具

水可溶性油絵具【デュオ】

「水彩画を描くような気軽さで油絵を描きたい」と思っている人は、意外と多いのではないでしょうか。デュオは水で描ける油絵具。油絵具独自の盛り上げや筆のタッチが出せるだけでなく、それまでできなかった水性絵具(透明水彩絵具、ガッシュ、アクリル絵具)との混用を可能にした、画期的な水可溶性油絵具です。
水に溶けるというと、「本当の油絵具ではないのではないか」と疑う人もいるようですが、デュオはれっきとした油絵具。数パーセント界面活性剤が入っていることを除けば、今までの油絵具と全く変わりません。従来の油絵具同様にテレビン油やペトロールなどオイルで溶いて使うことができる、水でも油でも描けるとても便利な油絵具です。

水に溶ける仕組み

「水」と「油」は仲の悪いものの代名詞。デュオはなぜ溶けるのでしょうか?秘密は界面活性剤にあります。
界面活性剤は水に馴染みやすい部分(親水基)と、水に馴染みにくい部分(疎水基)もった化合物です。
デュオと水を混ぜると、界面活性剤の油となじむ部分が顔料ごと油をくるみます。くるんだ外側は水となじむので、分離することなく水の中に分散します。——これがデュオが水に溶けている状態です。
ご存知のように、界面活性剤は石鹸の中に入っている成分。水では落ちない油汚れが石鹸だと取れるのは、界面活性剤が油の成分をくるんで水に溶ける状態にするからです。

デュオが水に溶ける仕組み

表現・使用上の魅力

水で溶いたデュオは一種の混合テンペラ絵具。ハッチングを利用したテンペラ技法が簡単にできます。これはデュオの大きな魅力と言えます。
ただ、水で溶いただけなら、普通の油絵具をテレビン油のみで描くのと同じ理屈になって固着力が下がります。この問題を解消するには、乾性油などを加えるとよいでしょう。水と混ぜられる専用のデュオ ペンチングオイル(界面活性剤入り)があります。同オイルは、従来の油絵具と練り合わせれば、水嫌いの油絵具がデュオのように水に溶けるようになるすぐれものです。これを用いれば、艶と固着力を保ちながら、水をベースに制作できます。
現在デュオは100色。鉛やカドミウムといった人体に有害な顔料を使った色は、「エリートシリーズ」として区別しています。ラベルに「ELITE」の表示がありますので、有害・無害を気にされる方は目印にしてください。
また、デュオは揮発性油を用いずに油絵が描けるので、呼吸器系が弱い人や溶剤に敏感な方でも安心して使える、人にやさしい油絵具です。筆やパレットなどなど用具類が水洗いできるのも魅力です。ただし、筆の毛の奥などに微量の顔料や乾性油が残ることがあります。
制作後には専用のデュオ ブラシクリーナーで洗浄することをお薦めします。

作例比較
DUO作例①

デュオ油絵具と水のみで制作。

DUO作例②

ぺトロールやテレビンの代わりに水を使い、デュオ ペンチングオイルで絵具を溶いて制作。



色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。