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水彩絵具の混色・重色、グラニュレーションについて

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「ホルベイン 透明水彩絵具」について

▶︎【ホルベイン透明水彩絵具】
2号(5ml)200~400円+税
5号(15ml) 380~830円+税
60ml 1,050~1,700円+税
※今回のカラーチャートではこの製品を使用

透明水彩は顔料(色の粉)とアラビアゴムの糊からできている。もともとチューブのなかった時代は小さな平鍋(パン)に入れて乾かして使われたので、今も固形の物はパンカラーと呼ばれている。
ホルベインの透明水彩は一貫して厳選した顔料とハンドピックと呼ばれる最も純度の高いアラビアゴムからできていて、過度の界面活性剤や透明性を損なうような材料を使っていない。このため透明度が高く、顔料本来の美しさを表現できる水彩絵具となっている。

透明水彩絵具の種類と特徴

ホルベインではチューブ入りとパンカラーやケーキカラーの様な固形の透明水彩を作っている。チューブ入りの絵具は三本ロールミルなどの湿式分散機で顔料と糊剤を練って作られる。パンカラーも同様にペースト状に絵具を練るが、これをいったん加熱乾燥させ、プレス機で押し固めることで製品となる。

チューブ入りの絵具は液状であるが、そもそも比重が1に近い糊の中に比重の大きな顔料を浮かべているので、顔料が必ず沈降する。これを防止するためにチューブ入りでは、何らかの沈降防止剤を使わざるを得ない。ところがパンカラーではこうした顔料沈降の心配がないので、よりピュアな絵具となっているのである。
ケーキカラーは顔料やアラビアゴムそのものを乾式粉砕してプレス加工した物だが、湿式分散させた他の絵具ほどは細かく分散できていないので、性能は他の種類より少し劣っている。

パンカラー

【パンカラー】400~650円+税

ケーキカラー

【ケーキカラー透明】直径25mm 200円+税
【ケーキカラー不透明】直径30mm 200円+税

水彩絵具の特徴を活かした基本表現

水分量による混色の表現

ブリリアントオレンジ

▲ブリリアントオレンジで塗り分けたキューブ

ピロールレッドとイミダゾロンレモン

▲ピロールレッドとイミダゾロンレモンの混色で塗り分けたキューブ

図の左側は溶く水の量で濃淡をつけたブリリアントオレンジでキューブを塗り分けたものである。これに対して右側は、ピロールレッドとイミダゾロンレモンの二色を混色し、同じく濃淡で描き分けたものである。ブリリアントオレンジの場合、薄めていっても色相に大きな変化はないが、混色した場合には、オレンジがどんどん黄色側に傾いていく。

何故こんなことが起こるのかを考えてみたい。絵具は顔料、つまり色の粒と糊でできているので、赤い色と黄色い色を混ぜたときには二つの粒が点描の様に並んでいる。これを見て、人間の脳がオレンジと錯覚しているに過ぎない。テレビと同じ原理である。しかも、色の粒は色ごとに大きさや形が異なる。赤が大きな粒で、黄色が小さな粒であったと仮定する。濃度が濃くなった場合、粒はそれぞれ密になるので重なり合い、黄色の粒は赤い粒に隠されて色は全体に赤みを帯びて感じられるだろう。
しかし、これを水で薄めていくと粒はまばらになり、黄色みを帯びてくることになる。色の見え方には色々な要因があるが、ここでは直感的に理解しやすい簡単なモデルとして紹介した。

重色の表現

ガンボージノーバ
▲ガンボージノーバを塗り重ねていったもの。重なるほど色が暗くなる。

混色の場合は自分で作った色の確認ができるが、塗り重ねでは、どういう色ができるのかがわかりづらい。このために近しい色同士の塗り重ねがなされるのがほとんどだろう。また、同じ色であっても、塗り重ねによって見え方が変わってくる。
できる色のわかりづらさはあるものの、混色にはない独特な味わいが楽しめるのも重色ならではである。図はガンボージノーバを塗り重ねていったものである。重色は色が重なっていくので、必ず反射光が減って、画面が暗くなるということに注意すべきである。色が重なることによって暗くなることをあらかじめ予想して、計画的に描かなければ、画面は思ったより暗鬱なものになるだろう。

混色・重色カラーチャート

■混色カラーチャート

混色の場合は混ぜてできた色を濃度調整しながら塗れるため、明るいものに感じられる。実は色相環の反対側にある色は何でも混ぜ合わせればグレーができるわけではなく、黄色と紫色を混ぜると茶色になる。

混色カラーチャート

■重色カラーチャート

重色の場合は一度色が塗られた上に、別の色が塗られるので、どうしても反射率が下がってしまい暗いものになる。重色で明るいグレーを作ることは難しい。水彩絵具はアクリルや油絵具と違い下地が溶け出してくるため、色が均一に見えづらいが、複雑な絵具の表情が得られる。

重色カラーチャート

混色・重色の使用例


赤色と緑色
青色と橙

黄色と紫


グラニュレーティング色による表現

グラニュレーティング色

■グラニュレーティング色とは?

絵具の中にも、顔料の粒が極めて大きいか、あるいは凝集しやすいものがある。これらを目の荒い紙に描くと、凹の部分に顔料がはまり込んで、まさしく粒として感じられるものがある。こうした現象をグラニュレーションと言い、そういう色のことをグラニュレーティング色(G色)と称する。図に示したとおり、セルリアンブルーなどはその典型的な色である。ホルベイン透明水彩のグラニュレーティング色については、ホームページを参照されたい。

このグラニュレーティング色は単独で使う場合も面白い効果が得られるが、他の色と混ぜたときには更に面白い効果がでる。前に述べたとおり、色と色を混ぜると、顔料の粒子の大小によって見え方が変わるが、グラニュレーティング色の場合は特に粒子が大きいので、混色した色の中に粒として感じられる。単純な色同士の混色には見られない複雑な表情を見せる。

■グラニュレーション(粒状化)とは…

グラニュレーションとは使われている顔料の粒子が大きいか、あるいは凝集して大きな塊になりやすい色が紙表面の凹みに溜まり、ザラザラとした質感を与える現象です。
ホルベインでは荒目の水彩紙に絵具を刷毛塗りし、自然乾燥後、色が粒子として感じられるものをG色(Granulation)として表示しています。

「美術の窓 No.435」2019年12月号

「美術の窓 No.435」 2019年12月号に上記記事が掲載されています。

「美術の窓」2019年12月号

掲載元:
「美術の窓」2019年12月号
混色・重色のヒミツ ㊙技法講座VOL.57

◆人気画材のカラーチャート
文・小杉弘明(ホルベイン工業株式会社技術顧問)「水彩絵具の混色・重色」

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