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色材の解剖学⑳ プライマー 【アクリル絵具・応用編】

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色材の解剖学では、色材に関する基本知識から専門的な内容まで制作に役立つさまざまな情報をご紹介します。

プライマー 【アクリル絵具・応用編】

アクリル絵具は油性以外のキャンバス、紙、木材、布などたいていの素材に使えますが、基底材によっては定着性が悪く、弾いてうまく塗れなかったり剥がれてしまうことがあります。また、木材によっては下地処理をしないと塗布面から渋(アク、ヤニ)が染み出し画面が汚れてしまうことも。
今回は、こういった定着性やアク対策に使用する下地処理剤(プライマー)について紹介します。
どれも水溶性で、普通のアクリル絵具と同じように水で洗ったり薄めることができます。

アクを抑える下地処理剤

木パネルなどの合板に、紙を水張りしたりジェッソや絵具を直接塗布すると、その水分によって渋(アク、ヤニ)が表面に浮き出てしまい茶色いシミような汚れになります。渋はラワンベニヤが出やすいとされています。シナベニヤからはほとんど出ません。

■ヤニ止めシーラー
ヤニ止めシーラー

木材の表面に塗布し、ヤニやアクのしみ出しを抑える水性の透明下地処理剤です。 ヤニによる作品の変色などを防ぎます。
原液で下地面に刷毛などで2~3回塗布してください。薄める場合は水を10%くらいまで加えます。塗布後1日以上乾燥させてから描画してください。
下地処理をせず渋が染み出してきてしまった場合でも、上からヤニ止めシーラーを塗布すれば抑えることができます。

定着を良くする下地処理剤

定着を良くする下地処理剤には金属・ガラス用プライマーと吸収性素材用プライマーの2種類があります。

■金属・ガラス用プライマー
金属・ガラス用プライマー

金属、プラスチック、ガラス、陶磁器など吸収性のない表面がつるつるしている素材は塗りにくく、絵具の定着性もよくありません。そういった水分を吸い込まない素材への絵具の定着をよくする下地処理剤です。
原液で下地面に刷毛などで1~2回塗布してください。薄める場合は水を10%くらいまで加えます。金属・ガラス用プライマーを絵具に30%以上混ぜれば、そのまま使用することもできます。

■吸収性素材用プライマー
吸収性素材用プライマー

レンガ、素焼き、石膏ボードなどの表面が粉っぽい素材は、付着しても脆い表面と共に剥がれてしまうことがあります。そういった吸水性のある素材に適した下地処理剤です。素材に染み込み固めて頑丈にし、アクリル絵具の吸い込みを抑え、固着性を向上させます。
原液で下地面に刷毛などで、乾燥後の表面に光沢が残る程度を目安に様子を見ながら1~2回塗布してください。水で薄めると効果が弱まります。塗布後1日以上乾燥させてから描画してください。

金属、プラスチック、その他基底材に2つのプライマーを塗布した場合と、何も塗布しない場合でのアクリル絵具の付着性を比較しました。
基本的にはプライマーを塗るだけでアクリル画用の下地が作れますが、基底材によっては塗布する前にサンドペーパーをかけ、基底材の上に細かい凹凸をつけた上にプライマーを塗布した方がアクリル絵具の付着性が高まる場合があります。

 
基底材 プライマー塗布なし 金属・ガラス用プライマー 吸収性素材用プライマー
×(△) ×
アルミ ×(△) ×
真鍮(黄銅) ×(△) ×
トタン ×(△) ×
ブリキ ×(△) △(○) ×
△(○) ×
ステンレス ×(△) ×
アクリル ×
硬質塩化ビニール ×
エポキシ ×
PET ×
FRP ×
ABS ×
ポリカーボネート ×
ケイカル板 × ×
ガラス × ×
陶磁器 × ×
タイル × ×
素焼 × ×
石膏板 × ×

FRP:強化プラスチック(一般にはガラス繊維入りのポリエステル) ABS:アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂 ケイカル板:ケイ酸カルシウム板(宇部興産のウッディセラムなど)

【記号説明】
○:アクリリック カラーの付着性が良好なもの
△:アクリリック カラーの付着性がやや悪いもの
×:アクリリック カラーの付着性が悪いもの
():サンドペーパー処理した場合




色材の解剖学は順次資料室へ収録していきます。