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ホルベイン×ザ・チョイス2019 用途別スケッチブック 「水彩画用ブック」

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ホルベイン×ザ・チョイス2019 用途別スケッチブック「水彩画ブック」登場!

ホルベイン×ザ・チョイスは、イラスト専門誌「イラストレーション」(季刊)の誌上コンペティション「ザ・チョイス」とホルベインの共同企画。
4回目となる今回は「用途別スケッチブック 水彩画用ブックの表紙を描くこと」をテーマに作品を募集し、約100点の作品が集まりました。審査員は数々の装丁も手がけるグラフィックデザイナーの川名潤さんを迎え、3名のアーティストを選出しました。
入選者の作品は用途別スケッチブック 水彩画用ブックのビジュアルに使用され、商品化されるまでのプロセスを体験できる試みです。 表紙デザインは審査員でもある川名 潤さんに制作いただきました。

 

ホルベイン×ザ・チョイス2019 用途別スケッチブック「水彩画ブック」

<仕様>
・サイズ:A4(210×297mm)
・アルビレオ水彩紙 151g/16枚 天糊パッド
価格:各¥650+税

 

林タロウ「いろざんまん」

林タロウ
「いろざんまい」
(http://hayasi-tarou.sakuraweb.com)

審査評

まずは林タロウさん。圧倒的に健康な色遣いと高い技術でこちらが選ばされてしまった作品です。描いているモチーフも、水彩パッドの表紙としては100点満点以上なものなので、もし選べる作品が1作のみだった場合、下心を無理矢理押さえつけ、こちらの林さんの作品を選んでいたかもしれません(下心の中身は総評に後述します)。……と言いつつも、ちょっとよく見れば、「これ一体どうなってんだ?」という絵でもあるんですよね。どうやら絵具製造機らしいということはもちろん分かる。でもなぜキノコが。どこで誰が何のために、何の材料で作っている絵具なのかということが、謎の菌類の発生によって分からなくなっています。キノコから考えると、絵具と機械の大きさもおかしい。いや、キノコがウイルスかなにかで巨大化したのか。この絵具、はたして一般流通させてよいものなのかどうかも怪しいです。そういういびつな美しさを含んでいる絵でもあります。

 

おかだしげひろ「雨粒金魚」

おかだしげひろ
「雨粒金魚」
(https://mokashigehiro.tumblr.com)

審査評

続いておかだしげひろさん。見た瞬間に、「よかった!こういうのを待っていた!」と思った作品です。なぜなのかはこれも後述しますが、選考に臨む際、どんな作品を選べばいいかという判断基準を、僕に絵の形で提示してくれた作品です。“スナックまき”、気になりますよね。行ってみたいです。でも多分、中には入らない。遠くから眺めて「いいねえ」と顎を撫でるようなお店です。この感じの絵を作ろうとした場合、なかなか水彩という手段を選ばないのではないかとも思ったのですが、背景のにじみの多用、それによる水中的空間演出、そしてトドメの金魚。水彩である必然性に溢れた絵です(水商売がかかっているのかとも思いましたが、それは多分考えすぎ)。あとから分かったのですが、おかださんはけっこうオルタナティブな漫画を描いていたこともあった方です。「それでこの画風!」と妙に納得したのですが、よくこの公募を見つけて応募して下さいました。

 

原田俊二「HOUSE」

原田俊二
「HOUSE」
(https://www.instagram.com/syunjiharada)

審査評

最後は原田俊二さん。実は原田さんの作風は存じておりまして、あれ?水彩だっけ?と不思議に思ったんですね。ご本人のTwitterを拝見したところ、普段は水彩どころか絵具全般を使用していないとのこと。今回の公募を見て水彩で自らの画風を水彩でやってみたという作品です。これはちょっと予想していなかった絵の種類でした。水彩+切り絵です。完全にテクスチャとしてのみの水彩利用。「確かにアリだ!」と思いました。水彩のテクスチャにはさみという境界線をバサリと入れたことによって、建物という無機物と水彩の「ミスマッチングの妙」を一番楽しむことが出来た作品です。ちなみに絵の構造上、地面に落ちた影と、建物のうしろから立ちのぼる煙らしきものという、はさみを入れていない部分に妙に眼を奪われます。影はわかりますが、煙は……?ボヤ騒ぎの最中でしょうか。逃げようともしていない人たちが心配ですが、この中に犯人がいるかもしれない。

 

総評

今回、ちょっと課題を課したんです。選考する自分に対して、ですが。応募の際のコメントで「公序良俗に反しなければだいたいいける」とあやふやなことを書きました。「いける」って何?ということはさておき。ホルベインさんという土俵、やっぱりメジャーじゃないですか。そこにマイナーを押しこんでみたいという下心があったんですね。お子さんも買うかもしれない水彩紙の表紙にちょっとこれは……みたいなものがあってもいいのではないかと。子どもの頃に血みどろのホラー漫画を愛読していた身としては思ったわけです。水彩というジャンルは、ちょっとその表現方法にある程度イメージを纏わされているジャンルだと思うんですね。優しい、やわらかい、さわやか、かわいい、などなど。偏見も含みますが。そこにちょっと多様性を入れてみたい、画材メーカーの公認のハンコをそこに貰いたい、といいますか。

応募作はやっぱり水彩らしい、健康的な作品が多かったのですが、水彩を使った表現の多様性を見るには十分なラインナップでした。最終選考の基準は、前に言ったような、水彩という画材の世界観を拡げてくれるもの、それとやっぱりどうしても技術によるところは大きくなってしまいました。水彩ってフレンドリーな画材なのに、実は要求される技術ハードルの高さはなかなかのものなんですよね。

最終選考に残った作品が実質、入選みたいなものです。水彩というサディスティックな画材をねじ伏せる技術の高さに唸ったものと、水彩でこんなことが、というアクロバティックな提案に驚いたもの、合計13点です。しかし、ここからさらにふるいにかけて3作を選ばなければいけない。頭のなかでは先に挙げた2つのポイントのどちらかをクリアしていれば入選と思っていたので、ここから先は3冊の水彩パッドの表紙をどう提示すればよいか、という「キュレーション」の範疇の話です。というわけで、テーマは「不穏な建物」という3つのチョイスになったわけなのでした。

 


審査員

川名 潤さん

川名 潤(かわな・じゅん)
1976年千葉県生まれ。
プリグラフィックスを経て、2017年川名潤装丁事務所設立。
多数の書籍装丁、雑誌のエディトリアル・デザインを手がける。

 

 

イラストレーション6月号

イラストの専門誌「イラストレーション6月号」に審査の様子、またコメント等も掲載しております。

「イラストレーション6月号」2019年4月18日(木)発売
http://www.genkosha.co.jp/il/backnumber/2451.html