アーティスト インタビュー vol.2「青木恵美子」
感情が動けば、それだけでいい。
2006年から作品を発表していたのですが、2012年に第27回ホルベインスカラシップ奨学生に選ばれた時は、自分の気持ちがちょうど勢いにのってきたときでした。ホルベインさんは信頼性があるブランドですので、いっぱい使ってみたいって思っていたので、1年間、4回に分けて画材をいただいたのは本当にうれしかったですね。
アクリル絵具はアクリリック メディウムをはじめ、いろいろな種類があるのですが、やはり使ってみないと分からない。たくさん提供いただいたおかげで、試行錯誤しながら自分の表現を磨いていけたと思います。もちろん、ホルベイン アクリリックカラーなどは今でも愛用しています。画材をたくさん使えるということは、作りたいものに対して多くの選択肢があるということ。質が高く粒子が細かくないと私が表現したい立体的な形も難しいので、ホルベインさんのおかげでこれらの作品ができたのだと思っています。
あれから7年経ち、大変でしたけど続けてこられたことは自信につながっています。とはいえ、没頭して描いている自分がいつもいるわけではありません。何かしらずっと考えています。私って、メモがすごい多いんですよ。その時に浮かんだ言葉、目に留まった言葉を書いたり、常にそういうことをしています。そんな日常での描いていない時の自分が、作品に反映されているんでしょうね。絵を描いていても良いことはないんじゃないかって思う時があるほど、絵を描くってしんどい作業が多いですけど(笑)。それでもやっぱり自分の追求する純粋な絵画が見てみたい、描きたいっていう気持ちがずっとあるから続けられるんだと思います。継続は力なり、これに尽きると思います。
個展を始めた2010年頃から、3つのシリーズで作品を作っています。始めは「EPIPHANY series」を描いていたんですが、そこから自然発生的に「INFINITY series」 「PRESENCE series」が出てきました。それぞれ異なるものではなく、精神性や存在性など最初の作品から要素を抽出したもの。全てがつながっていて、私の中でバランスを保っています。自分の絵の中で色彩は神聖なものとして位置付けているので、色の美しさ、透明感などで生命の純粋さや力強さが象徴されるように描いています。色って思考の純度を表しているような気がするんですよね。
作品を作る時のコンセプトは自分から探してはいないです。作品のことをずっと考えているのもいいと思うんですが、私の場合は日常の暮らしの中で、ふとした瞬間や感情がつながっていく。それぞれが積もっていき、ひとつのビジョンが見えてきた時に作品を描き始めます。私の作る作品においては、もっとリアルな日常で感じることを表現できたらいいなってずっと思っています。
私の場合、作品をこのように観てほしいという思いはありません。作品を見ることで「きれい」「かわいい」といった感想や感情が生まれることが私にとって一番うれしいです。花など自然を見て「きれい」って思うのはありますが、物質を超えて美しいと感じることって特別だと思うんです。そう思えることや時間ってとても素敵ですよね。
例え“きれい”じゃなくても、「これ、どうやって描いてるんだろ?」「なんだこれ、出っ張ってる」って私の絵を見て何かしらの感情が動けば、それでいいんです。見てほしいというより、感じてほしい。そのためにも今まで自分がやってきたことをもっと追求して、作品を発表していきたいです。まずは何よりも続ける、そうしないと何も生まれないと思っています。
青木恵美子
Emiko Aoki
1976年 埼玉県生まれ。
2010年 多摩美術大学大学院美術研究科油画研究領域修了
2007年 「第6回奄美を描く美術展」奨励賞
2010年 「シェル美術賞2010」本江邦夫審査員賞、「トーキョーワンダーウォール2010」東京都現代美術館(東京)
2012年 第27回ホルベインスカラシップ奨学生、「あいちアートプログラム:アーツチャレンジ2012」愛知芸術文化センター(東京)
2017年 「FACE展2017」グランプリ、オーディエンス賞 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜館(東京)、「VOCA展2017」佳作賞、大原美術館賞 上野の森美術館(東京)
2018年 「クインテット―五つ星の作家たち」東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(東京)
2019年 「絵画のゆくえ2019」東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(東京)
青木恵美子ポートフォリオサイト
http://www.aokiemiko.com
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