アーティスト インタビュー vol.4「末松由華利」

次代を担うアーティストを訪問し、その活動を紹介していきます。今回は第33回ホルベイン・スカラシップ奨学生で画家の末松由華利さんをピックアップ。個展「満ち欠けのあらまし」が行われていた日本橋のspace2*3(KURUM'ART contemporary)にてお話をうかがいました。
末松由華利

普段は100号以上の大作を描かれるイメージがある末松さん。今回の個展は描き下ろされた小作品と、過去作品の前段階に描かれたドローイングや習作の展示でした。

コロナ禍の影響の一つとして、スカラシップ成果展の延期での開催がありました。成果展の展示作品についてご連絡いただいた時の「この社会情勢を経て行われる展覧会に向け、ベストな構成となるよう制作してきた作品です。」との言葉が力強く印象的でしたが、他に作品や状況に何か変化はありましたか?
「家に作品を飾りたいので購入方法を知りたいと、国内外から何件かSNSに直接問い合わせが来ました。プライベートとパブリックの線引きが変わってきたように思います。みなさん、美術作品は出かけて見るだけのものでもないと気付きはじめたのではないでしょうか。また、この出かける場所を厳選しなければならない状況下で、自分の展示を選んで観に来てくださったことはありがたく思います。」


昨年の個展project Nで発表された「架空の値打ち」の為の習作。ドローイングは10枚組作品になるまでの変遷がうかがえますし、SMサイズの習作はproject Nで作品を見た者にはミニチュアのようにも思え、楽しめます。
このサイズのものは2~30枚は描いたそう。良く見ると展示の3点だけでも微妙に地の色に変化があり、試行錯誤の足跡がわかります。



今回の新作は仕上げるのに苦労したとおっしゃる末松さん。
この展示作品の試作品にも小さいものがあるのかうかがいました。
「このくらいだと同じサイズで何十枚も作ります。色の実験もしますね。アクリル絵の具の滲みや暈しを活かして創り出す作品の性質上、制作は絵の具が乾ききるまでの時間との勝負です。制作中に、作品の要となるよう色や、筆運びを吟味する時間を最大限に確保できるように、その他の部分は習作の段階で綿密に計画するのです。」
末松さんの作品は偶発性のにじみ・ぼかし表現と思われがちですが、実は習作が何十枚もあり綿密に計算しつくされた上での作品の為、再現性は高いそうです。納得がいくまで習作を描かれている末松さんならではと思いました。
末松さんはアクリリック カラー[フルイド]をお使いです。フルイドについてレビューをいただきました。
「素早く均一に水に溶ける特性、色味、程よい艶感が、滲みやぼかしを多用する表現において、重要な役割を担っています。容器の口の部分に高さがあるので、絵具を出した際に口の周りに絵具が付くことがなく、無駄にならず、手入れの必要がないところが気に入っています。」

※こちらの写真はスカラシップ成果展での末松さんの作品です。
ホルベイン スカラシップレコード2020 末松 由華利
https://www.holbein.co.jp/scholarship/record/vol33/4.html
末松 由華利
SUEMATSU Yukari
個展
グループ展
受賞歴他
パブリックコレクション
ATAMI BAY RESORT KORAKUEN/静岡
星野リゾート軽井沢ホテルブレストンコート/長野
末松由華利オフィシャルサイト
https://yukarisuematsu.wixsite.com/mysite