
ホルベイン・スカラシップ・レコード
2025
ごあいさつ
現代社会の様々な分野基盤の多くは、時を遡る19世紀に産業革命とそれに伴う科学の発展、合わせて教会権力の衰退などを背景に形成されます。まさにパラダイムシフトのうねりの中に社会全体が晒された時代です。その頃の画家に脅威となる出来事は写真(紙焼き)の出現です。『皮膚とは何か』『光とは何か』など探求の元となる、対象の現実味を描くという根幹が揺らぎ、考える必要がなかった『絵画とは何か』との問いかけを始めます。それは他のメディウム(彫刻や写真)との差異、言わば絵画固有の言語をどのように作るのかの考察、その本格化です。そしてその“種子”から20世紀は沢山の大きな“花”を咲かせ、仕事場はそれを追求する実験室となりました。
この史実から2025年の現在地点を考察した時『その花に実る“第二世代の種子”を作る』という、新しい循環のフェーズに入ることに私達は着眼しています。現在の経済至上主義の渦に飲まれ『色違いの“花”を咲かせようとする』のではなく、未だ見ぬ“種子”の姿を探求する‥それは時流に逆らう困難さを伴うかもしれませんが、そんな意識で制作する表現者に寄り添い、応援したいと私達は考えます。
画家は何か成し得ようとする動機に対して、何かのイメージになる事を絵具に託して来ました。
「あなたは何を問い掛け、何を絵具に託しますか?」
ここへ真摯に応えようとする人の声に耳を傾けながら弊社は共に冒険者でありたいと思います。
“色材と道具”という表現活動の根幹を提供することから、制作者を支援する取り組みをしてきたホルベイン・スカラシップは、この度、第37回目を迎える事となりました。今まで多くの方々に賛同と参加をいただきながら広く認知され、成長して来たことに対し、改めて感謝申し上げます。
本誌は7名の奨学生が経て来た1年間の該当期間の活動記録です。どのレポートも興味深い内容ですので、どうぞご高覧いただけますようお願い致します。
2025年10月
ホルベイン画材株式会社
スカラシップ実行委員会
第37回 奨学生一覧
2024年に認定された7名が各々受給した材料・用具で制作した作品とレポートの記録をWEB図録(PDF)にまとめています。







