絵具、絵画材料のホルベイン

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ホルベイン・スカラシップ・レコード
2020

あいさつ

ホルベイン・スカラシップは、第33回から「新しい」奨学制度としてスタートを切りました。

7名の奨学生は2019年6月に283名の応募者から選出されています。審査員は、これまでの非公開から公開へ変更。今回の審査は堀元彰氏(東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター)を筆頭に、畑井恵氏(千葉市美術館 学芸員)、仙石裕美氏(画家 FACE損保ジャパン日本興亜美術賞2018グランプリ 第19回ホルベイン・スカラシップ奨学生)の3名にお願いしました。

奨学生制度は今回から内容の一部を変更し、作家と弊社との密接な関係性を構築することを新たなミッションとして掲げています。昨今ではなかなか実現できていなかった奨学生のアトリエ訪問や、期間中の課題レポート提出を実施するなど、作家の「今」の情報を社内に共有しました。また、これまで同様、技術的な質問事項には専門の部署からの見解やアドバイスもお伝えしています。

2020年7月、第33回奨学生の成果展が開催されます。スカラシップの展覧会は第5回まで実施されましたが、実に28年ぶりの開催となります。多くの画廊や美術館と同様に当初予定していた4月の開催は出来ず展覧会中止になってもおかしくない状況の中、佐藤美術館様には開催延期の日程調整にご尽力いただき、感謝の念に堪えません。

いまだコロナウイルス禍は収束したとは言い難い状況です。しかし、描かずにいられない作家たちは作品を作ります。ホルベインもそこに寄り添い続けたいのです。

ここに掲載される作品は、第33回奨学生がホルベインから受給した色材・用具をメインに使って制作したものとなります。成果展での展示作品と、このWEB発表の作品は必ずしも同じではありませんが、どちらも奨学生の活動の記録となります。

どうぞご覧ください。そしてこの作家たちの未来にも、どうぞご期待ください。
2020年7月

ホルベイン画材株式会社
スカラシップ実行委員会

査員 講評概要

堀 元彰

堀 元彰
東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター

普段は使わない画材を試して新しい表現にチャレンジしたり、画材の調達にまつわる労苦から解放されて純粋に制作に集中できたというアーティストの声は、このスカラシップならではのメリットをよく教えてくれるものだし、実際に会場に展示された作品もそれをよく物語って余りあるものだと思います。

当初4月に開催される予定だった成果展は、新型コロナウイルス感染症による自粛の影響で延期となり、3か月遅れでの開催となりました。その間、世界中で感染拡大が広がる感染症の問題は、アーティストの制作にも少なからず影響を与えたように思われます。

成果展は28年ぶりというのは意外でしたが、印刷物では十分に伝えきれない“生の”作品の魅力を、最大限に感じられるような見ごたえのある展示になっています。


畑井 恵

畑井 恵
千葉市美術館 学芸員

普段通りの制作が困難な状況においても、奨学生の皆さんが画材という観点から自身の制作を捉え直す、あるいは新たな試みに身を投じるといった意欲的な態度をもって、各々の視点で絵画を追求した成果としての展示を見ることができたことに、感謝の意を表したいと思います。

また、本展の開催を通して、作品を見ること、展覧会を体験するということを、一鑑賞者として改めて考えさせられる機会ともなりました。作家による制作という行為とそれに伴った時間が凝縮された作品に、鑑賞者が対峙し、描かれた背景を想像したり、メッセージを読み取ったり、紐解き、編み直すことで関係性を築いていく。そのような相互的な関係性のもとに成り立つ、時間や場所を越えた対話の形を、ぜひ会場で体験していただければと思います。


仙石 裕美

仙石 裕美
画家 FACE損保ジャパン日本興亜美術賞2018グランプリ 2004ホルベイン・スカラシップ奨学生

全体的に明るく強さのある色調の作品が多いのは昨年のファイル審査の際も印象的でしたが、実際の展示作品はそれぞれの画材の質や扱いに幅があり、初見での面白さから何周かするうち見えてくる画面の中のデリケートな研究の痕跡など、それぞれの作家の個性が見え、とても充実した展示でした。作家の視点で見ると、画材の支給を受けて制約から解放されて画材を使える喜びや意欲が、画面の強さとなって感じられるようでした。

また2020年制作の作品も多く、新型コロナの流行を受け、作家が改めて絵画の意義や制作に向き合う様子も見え、今後の絵画の在り方を考える上でも、とても意義深い展示だったと思います。この時期の開催だからこそ、改めて制作や鑑賞に「立ち合う」ことの意味を考えさせられ、また絵画の実物のもつ力を改めて確認する機会となりました。

 

第33回 奨学生一覧

2019年に認定された7名が各々受給した材料・用具で制作した作品とレポートの記録をWEB図録(PDF)にまとめています。